97/10/24過去の資料から

 過去の文書ファイルを整理していると、こんな資料がでてきました。

  この年は2件5日連続で捜索にあたり、今この資料を読むと、その時の苛立ちが改めて蘇り恥ずかしく思います。が、これも当時は現実でした。

概要は、
 野反湖ダムサイトの駐車場に乗り入れた車の持ち主が行方不明。どうも釣り目的で千沢に入渓したらしい。しかし地元の常識では千沢に入渓する事は「無謀であり考えられない。」との見解から、その周辺の沢や湖を捜索したが発見できない。平成6年7月7日、折しも七夕の日、遭難者は帰らぬ人として千沢で発見された。

以下、六合村長に宛てた意見書をそのまま掲示します。

   六合村長 殿

                       平成6年7月11日 尾崎 博章

94年7月 千沢遭難事故に於ける反省点と、今後の捜索活動に関する課題。

《反省》

1、今回の事故現場は、ヘリでの捜索が適切に行われていれば、上空からでも発見の可能性が、高い場所であった。

2、切明へ向かう登山道捜索の際に、「千沢、魚野川、渋沢のいずれかに入った形跡の有無を調査する」という指示が出ていれば、早期発見が可能であった。

  補足:志賀高原遭対協の救助隊は7日、千沢に人が入った形跡を確認している。

3、捜索活動に於ける遭対協無線の利用が充分になされておらず、また、その重要性に対する認識が甘い。

  補足:3町村が同一遭難者の捜索に臨んでいるのに、3町村間での無線連絡を取り合わない。本部が野反湖に在るのなら六合村が主導権をとり、積極的に無線連絡を行うべきであった。前記2の補足がポイント。

4、遭難者発見の報告を入れてから、その後の対策指示までの時間が長すぎた。

  補足:特殊な状況下であったが、対策指示決定まで約3時間を要した。

《問題点》

1、遭対協があるのにもかかわらず、ザイル、ハーネス、ツェルト等の装備が用意されていない。

2、捜索活動に当たった各人に、統一の地図が配布されていない。各沢(枝沢含む)の名称、地域の名称、距離、遭難者の性別、年齢、氏名、服装等の特徴等の情報は最低限度ほしい。

  補足:北も南も分からず、ただ人の後をついて歩いていては、二重遭難の恐れがある。

3、捜索員の手配、遭対救助隊員出動保険制度の手配、捜索方法等の対応が遅い。特に、捜索方法の検討は前日に検討し、各関係町村に連絡してスリ合わせを行い、当日の朝の貴重な時間に行うべきでない。

4、捜索活動に当たった人々の安否、下山(解散)時刻を有線で放送するべき。

  補足:危険地域での捜索では、捜索隊の家族が心配している。

5、消防団、山岳会、一般民の間に、奇妙な誤解、牽制等おかしな雰囲気が存在する。

  補足:お互いに消防団、山岳会、という団体に固執し、遭対協で行動しているという認識がない。

遭対協とは「遭難防止対策協会」の略で、遭難者があれば、その捜索に当たるのは当然であるが、遭難事故を事前に防止するのが本来の目的である。

《課題》

 六合村遭対協の会則なり規則なりを、実践的に対応するよう再検討、再構成し、あらためて村民の理解協力を得る。

1、遭難事故防止対策。

 1-1、ハイキングコース等の整備と安全性の拡充。

  1-1-1、村制作のパンフレット等に記載のハイキングコースの定期点検。

      補足:赤石~かもしか平間は、およそ15年前にコース整備して以来まったく手入が行われていないようです。ハイキングコースとは、言えないものながら、「野反湖は、ぱちぱちが、いっぱい」のパンフレットには、コースと距離、間違った所要時間を丁寧に紹介しています。仮に、このパンフレットを見て入山したハイカーが遭難した場合、捜索費を請求されたり、訴訟問題に発展したりする可能性は充分にあります。

 1-2、入山者に対する啓蒙活動。

  1-2-1、難場、難コース等に危険性の明示や、遭難した場合の心得を掲示する。

  1-2-2、整備不可能なコース、地域への立入禁止掲示。

 1-3、地域情報に対するチェック機能。

  1-3-1、誤った記載をしている村制作のパンフレット等の廃棄、手直し。

  1-3-2、アウトドア関係誌等の誤った記載に対する訂正申し入れ。

2、救助部の設定。

 2-1、救助部の設定を行いその人選を行う。

  2-1-1、体力、知識、経験等を考慮する。

  2-1-2、人選に当たっては、不満、内紛の起こらないような制度とする。

 2-2、装備の確保、及び使用方法の取得。

  2-2-1、無線、ザイル、ハーネス、ピトン、カラビナ、エイト環、ets

  2-2-2、装備を安全、迅速に使用できるよう訓練を行う。

3、事務局の制度化。

 3-1、初期対策、早期発見が円滑かつ適切に行われるようマニュアルを作る。

  3-1-1、警察、捜索依頼人、関係行政区担当者との連絡。

  3-1-2、捜索隊(消防団、山岳部)、救助隊の手配。

  3-1-3、遭対救助隊員出動保険制度の手配。

  3-1-4、捜索隊班長等を混じえた捜索方法の検討と指示。

 3-2、事後処理。

  3-2-1、事務の事後処理。

  3-2-2、各関係者への報告。

  3-2-3、反省点、問題点を検討し次回のため改善。

4、群馬、長野、新潟の隣接町村との協力体制の強化。

 4-1、群馬県遭対協総会への出席。

 4-2、隣接町村の合同会議への出席。

    補足:年内に開催される予定で、志賀高原遭対協は、六合村の参加を切望している。

 アウトドアブームの広まりにより、登山、釣り、山菜採り等で当村を訪れる人は、今後も増加するものと思われる。 また、観光村を目指す上では、観光客の誘致と遭難事故の危険性は、常に二律背反するものとして心得ておくべき事ではないでしょうか。

 遭難する事を目的に山へ入る人はいないはずだし、仕事等に支障をきたし、精神的にも肉体的にも疲労する捜索に、喜んで参加したいという人もいないはずだし、また親愛なる家族、隣人が、怪我、二重遭難等のトラブルに会うことを望んでいる人もいないはずです。誰一人として遭難の発生を望む人などいないのです。

 更なる遭難事故の可能性を”放置”しておいては、千沢での遭難死亡事故の”教訓が無駄”になってしまいます。今一度、遭難防止対策協会の名のもとに、遭難事故の未然防止を最重要目的とした体制、制度を、改めて考えても良いのではないでしょうか?

以上

98/05/31「反省も込めて其の二」 に関連事項があります。

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