99/06/05途中撤退「T山岳会月例山行」Yさん

 先日、佐武流山の登頂を目指す方から付近の残雪状況の問い合わせがあり、簡単にお伝えしたところ、登山計画書に続き山行記までメールを頂きました。残念ながら途中撤退となったようですが、完全なる勇気ある撤退であります。(こんな言葉本当にあるのかな?)このような山行記こそ多くの人々に読んで頂きたい。また、詳細な内容であるため一昨年の記憶が鮮明に蘇りとても興味深く読ませて頂きました。


 佐武流山を秘峰のうちに登頂を果たそうと考える人がいることに新鮮な驚きと感銘を受けましたが、頂いた山行記の内容の中で一部気になる部分があったので、Yosidaさんの了解を受け掲載することにしました。掲載に対して快く許諾して頂いたYosidaさんにこの場でお礼申し上げます。


 さて、気になる部分とは、事前調査なしで入山する登山者が相変わらずいる点です。下記の山行記に登場する<半袖の登山者>や<女性の単独登山者>は私に云わせれば<無謀登山者>でしかありません。


 なにも、<半袖>や<単独>や<女性>が<無謀登山者>と云っているのではありません。問題視しているのは、山に対する<姿勢>であります。本人が気付かず危険を背負っている姿は、ある人から見れば滑稽でもありますが、命に関わることであれば、笑って見ているわけにはいきません。もう少し山に対する<姿勢>を真剣に考える必要があります。何せ命を賭けた遊びなのだから。


 またまた前置きが長くなりました。それではYosidaさんの山行記をご覧下さい。


 尾崎さんこんにちは、N県T市のYosidaです。事前の情報有り難うございました。


 昨日より苗場山塊の最高峰である佐武流山に登るべく行動していたのですが、体力的な限界を感じ途中で引き返してきました。


 以下その報告です。


期日 99/6/5~99/6/6


メンバー T氏、H氏、Yosida  T山岳会月例山行


コースタイム


6/4
20:40 T市発=24:20 野反湖着(野宿)


6/5
4:55 野反湖発-5:38秋山分岐着5:42発-6:48堂岩の水場着7:11発-8:57白砂山着9:27発-10:40最低鞍部着10:55発-11:40沖ノ西沢ノ頭手前着(昼食)12:40発-13:00沖ノ西沢ノ頭通過-13:05沖の西沢の頭北方着(荷物をデポ)13:15発-14:10赤土居山(赤樋山)着14:30発-15:10沖ノ西沢ノ頭北方着(荷物を回収)15:37発-15:50沖ノ西沢ノ頭山頂よりやや南方着(幕営)


6/6
5:40幕営地発-6:43最低鞍部着6:53発-9:20白砂山着9:50白砂山発-11:30堂岩の水場着12:15発-13:05秋山分岐着13:13発-13:53野反湖着14:15発=六合村温泉医療センター=19:30T市着


 佐武流山は苗場山と白砂山の中間に位置しこの山塊の最高峰であり、かつ深田クラブが選定した日本200名山に選ばれている。しかし、現在は整備された登山道はなく、残雪期か薮こぎを覚悟で登るしか方法はない。


 昨年9月にT山岳会の山行で白砂山に登った時この山に登りたいと思うようになった。そして、佐武流山に秋山郷から登山道を付ける計画があることを知り益々興味を抱くようになり、出来れば登山道が出来る前の秘峰のうちに登頂したいと思うようになった。


 昨年暮にT山岳会より翌年に登りたい山を提出せよといわれ、迷わず佐武流山を希望したら、リーダー会でこの山行が決定し(私はまだ昨年入会したての新人だったのだが)6月の山行として私がリーダーとして行くことが決まった。


 山岳会の月例山行とはいえ登頂が困難な山ということもあってメンバーは3人で行くことになった。


<6/4>
 Tさんの車でメンバー各人の家に迎えに来てもらいT市を出発。昨年白砂山に行っているので道はよく覚えている。深夜に登山口の野反湖に着いた。駐車場には数台の車が停まっていた。駐車場は幕営禁止だったが、深夜着で早朝発なので駐車場にテントをはりテントと車に分かれて就寝した。


<6/5>
 辺りが明るくなり出した頃起き出し、簡単に朝食を摂って出発した。白砂山までは整備された登山道を行く。ただし、この道はアップダウンがある道だということは昨年の経験で分かっていた。


 歩き出すといろいろな小鳥のさえずりが聞こえてきた。あいにく鳥に詳しいメンバーがいなかったので種類は分からないが、バードウォッチャーなら喜ぶのではないかと思われるくらい種類が多かった。途中で25名の団体に追い越された。こちらは重装備、団体は日帰り装備歩く速さが違う。


 堂岩山の手前に水場がある。水場は登山道より2分くらい下ったところにある沢だ。堂岩山で森林帯を抜け、正面に白砂山が堂々とした山容を現した、そして、左手に目指す佐武流山がどっしりと構えていた。


 天気は晴れ、気温は高く半袖で歩いても汗が出るくらいだ。道端に石楠花の花が沢山咲いていた。白砂山山頂手前の南側斜面にシラネアオイの群落があった。白砂山の山頂は団体がいたせいもあるが沢山の人で賑わっていた。そこで、30分の休憩をした。


 休憩後佐武流山に向かって歩き出す時は、多くの人に見送られる形となりまるで出陣のようだった。白砂山山頂の隣のピークを巻いた先に佐武流山に続く尾根が分かれていた。道は薄い踏み跡があるがネマガリダケが濃く踏み跡はその下に隠れていて上からは全く見えない。しかし、白砂山より距離にして1kmくらいは半分以上雪の上の歩きで快適なペースで進んでいった。


 尾根が小さく西にカーブする辺りから雪は少なくなり、ほぼネマガリダケの薮こぎになった。踏み跡はほぼ消えていた。2000m級の山なのでまだかなりの雪が残っていると私は判断していたがこれはまったくの見当違いであった。


 プラスチックプレートが木に打ち付けてあったり、ビニール紐や布が木に縛りつけてあったりで目印は沢山あり、行軍の助けになった。私たちもオレンジ布を要所要所に付けて帰り道の目印にした。


 最低鞍部に着くと、用心の為に持ってきたアイゼンをこの先では使うことが無いという判断をし、そこに置いていった。最低鞍部はテント2~3張りくらい張られる広場があった。


 最低鞍部から登り少しの間はネマガリダケが生えておらず踏み跡が明瞭だったが、すぐにまたネマガリダケの密叢になった。踏み跡は全く無い。とにかく重い荷を担いでの薮こぎは思った以上に労力を費やし行軍速度は極端に遅くなっていた。最低鞍部よりの登りで最初の雪渓があるところで昼食にしようと考えていたが、最初の雪渓が現れたのは沖ノ西沢ノ頭の少し手前の標高2000メートル付近だった。


 水は雪が頼りだ。とりあえずそこで昼食とした。メンバーの疲労度は思ったより進んでいるように見えた。当初は赤土居山(赤樋山)の西鞍部で幕営の予定だったが、この調子だと重い荷を担いでそこまでの到達は困難と判断した。しかし、士気が衰えるといけないので登頂を諦めるとは言わず、沖ノ西沢ノ頭北側で雪の有る所で幕営地を決め荷を軽くして佐武流山を目指そうとメンバーに伝えた。


 しかし、この近くで幕営地を設定するからには当日中にそこまで戻ってこなければならず引き返す時間を3時30分と決めそれをメンバーに伝えた。沖ノ西沢ノ頭北方は北斜面の雪を期待していたが、尾根が痩せているので雪がつかず、わずかな平場をとりあえずの幕営地を設定して荷物をデポし歩き始めた。


 赤土居山(赤樋山)の登り始めまでは尾根が痩せているせいか踏み跡が明瞭にあった。赤土居山(赤樋山)に着いた時、メンバーは疲労感を顔に出していた。薮の状態からここから佐武流山の往復は約5時間かかると判断した、そのうえ幕営地の沖ノ西沢ノ頭まで戻らねばならない。時刻は14時を回っている佐武流行きを強行すれば日没までにはとても帰り着けない、よってここで撤退を決意した。残念だが仕方が無い、当初から計画に無理があったのだ。


 佐武流山はガスの中に隠れて姿を見ることが出来なかった。幕営地は沖ノ西沢ノ頭山頂よりやや南側の雪渓の近くにした。ネマガリダケの薮の中に幕営することにした。その晩は前夜の睡眠不足と当日の行軍の疲れから日も暮れないうちに就寝した。


<6/6>
 この日も快晴だった。早朝に幕営地を出発して、我々が付けた布を回収しながら往路を戻った。最低鞍部からの登りはきつかった。登りは薮が逆目で薮をこぎにくい上、ネマガリダケは滑りやすい。


 白砂山が近づいた雪の上で登山者2名にすれ違った。何処まで行くのかと問い合わせたら佐武流まで行くという、荷物を見ると日帰りのようだ。道の状況とだいたいの時間を伝え日帰りじゃ登頂困難だと伝えると時間を決めて引き返す事にすると言っていたが、半袖に手袋もしていない、薮こぎの経験は有るのだろうか。


 ちなみに私の薮こぎ装備は、長袖のシャツに長ズボン、手袋をはめて目をガードする為のサングラスといういでたちだ。白砂山まで戻ると長い薮こぎは終わり、あとは整備された登山道を戻るだけだ。


 薮こぎをして登山道に出ると行軍速度がまるで違うのに気づく、いかに整備された登山道がありがたいかが分かる。ただし、白砂山からの下山は登り返しが多く、そのうえ、疲労が加わっているので登と同じくらいの時間がかかってしまった。


 右側に絶えず見える佐武流山は大きく堂々としていて我々を見守ってるようだった。この日も沢山の登山者が白砂山目指して登っていた。堂岩の水場で昼食にした。

 そこに単独の女性が休んでいて、聞くと苗場山までの縦走を計画しているという。ただ2泊3日の予定だそうだ。私は我々のコースタイムを彼女に伝え2泊3日の予定で初日の昼頃まだここにいる様ではとても無理だと伝えた。薮こぎの経験は多少有るようだが、考えを変えた方が良いと私が伝えたら、地図を見ながら落胆していた様子だった。彼女は結局何処まで行ったのだろう。私の忠告を受け入れてくれただろうか。


 ようやく登山口の野反湖に帰ってきた。野反湖は多くの観光客で賑わっていた。気温は夏を思わせるような暑さだ。帰りに六合村温泉医療センターで汗を流して帰路についた。


 佐武流山は今年来年と秋山郷からの登山道が整備される予定だ。登山道が整備されれば秋山郷に前夜入れば一日で山頂を往復できるようになるだろう。薮山のうちに登るには来年の登山道完成前に行くしかない、再びチャンスは訪れるだろうか。


N県T市 Yosida

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