99/11/21水無尾根ルート

 9月17日~19日の山行記録を何故今頃?と思う方もいるでしょう。答えは、<わざと>掲載を遅らせました。


 先日(16日)の寒波を待っていたのです。2000m級の山々が雪で覆われ安易に登山できなくなるまで。


 佐武流山への水無尾根ルートを紹介するに当たって、危惧することがあったのです。(また前置きです、くどくどとスミマセン)


 実は、最終日の9月19日、佐武流山山頂まで、ルート探索・枝払い・印付けが終了し下山する途中、空堀(後述参照:地形呼称)で、男女8名の中高年登山者とすれ違ったのです。


 何処かで、我々が作業しているのを聞き、作業者が大勢入山しているから安心と、<トレース泥棒>よろしく<図々しく>登ってきた次第で、世間では<分別盛り>の中高年の<厚顔無恥>さに<驚き>と<無念>が・・・。


 『前進倶楽部』は今年で2年目の作業であるのにも関わらず、お互い登頂したい気持ちを抑え、佐武流山で200名山完登となる人1名だけを代表者として、我々と行動し登頂を果たしたのでした。


 彼らがストイックなまでに作業に専念していたことを知っているので、尚更、私達の脇を「ごくろーさまです」と、スイスイ登っていく登山者に・・・。


 すべての登山者がこうであるとは毛頭思っていませんが、「中には居る」と考えてしまい、日照時間・装備・天候の面で判断が難しい初冬の時期前に、ルート紹介することで、万が一遭難者が出てしまうと、2000年整備完了予定している『前進倶楽部』の盛り上がりを殺いでしまいかねないので、<冠雪するまで>をめどに、控えていました。


 長々と続いた前置きにおつき合い頂ありがとうございました。それではルート紹介を始めます。


 檜俣川沿いに走る林道は行政上、国道405号である。にもかかわらず、ゲートには鍵が架かり一般の人は登山道入り口まで、ダラダラと曲がりくねった砕石を敷いた林道を1時間近く歩かねばならない。


 月夜立岩を仰ぎ見、正面にトマグチ沢の堰堤を見る頃、檜俣川へ、トマグチ沢沿いに降りていく真新しい丸太で作った階段(1300m)を見る。しかし、全線整備完了していないので、まだ道標の類はない。


 沢音を左に聞きながら15分も降りると、檜俣川右岸の大岩の上に出る。水量は、慎重に渡ってもくるぶし迄濡れる程度で、通常では問題ない。もちろん、降雨や水に濁りがある場合には各自の判断で危険回避すべきであるのは当然の事。


 以下の写真ではロープが張られているが、作業物資(丸太、チェーンソー、草刈り機など)運搬の際に安全確保のために張ったもので、通常は不要である。

檜俣川
檜俣川


 渡渉すると「山脈日光三国山系、カモシカ保護地域、文化庁長野県教育会」と記された青色の看板(1180m)がある。旧道は下流にあったが、今回整備したルートは営林署の巡視路を利用している。


 前出の青色看板脇から登り初め、10分もすると平坦なカラマツ林(1260m)となる。カラマツ林を抜けると急登となるが、丸太階段や、トウグワで切った整備された道で歩きやすい。


 樹相はブナとなり、目通し1.2mもあろうかと思われる五葉松を過ぎ、2本の太い栂の木(1560m)がある所が、時間的にも休憩するには絶好のポイントである。よく見れば、そり道(土引き)跡もあり、先人が木を搬出している光景が脳裏に浮かぶ。この登りは、我々が印付けしたルートよりも、直登気味であるため、少々きつい。


 登りは緩やかとなり、小さな窪地をポコッ、ポコッと越え、新しい倒木帯(歩きには支障無し)を抜けると、赤土の小さなザレ場(1650m)に出る。ここも休憩ポイントとなる。ここでの景観が良い。稜線の北側からは、月夜立岩が見え左後方には鳥甲山を望める。眼下には林道に置いてきた車が小さく見え、高度を稼いだことを実感する所だ。(残念、ここでフイルムが終わった。)


 樹相は低木灌木で、シャクナゲの根回りに浅く取り付いている土が、落とし穴のふたとなり注意して歩かないと、無用に土をはぎ取ってしまう。一旦、ガレ場を下り、南側がキレットとなっている小さな鞍部(1770m)に出る。


 96年に調査したときのビバーク地点だ。当時、ここに到達した時、19時前であった。今回は同じ時刻に出発して10時前。この9時間の差がヤブ山の強烈さを物語っている。


 それにしても良くこんなところで寝ていたものだと思うほど、ビバークポイントとしては不適切な場所だ。疲労にかけて日没が迫ってきたのと、定時連絡しているうちに、「めんどくさい。ここで飯食って寝よう」と、なったのである。


 無風、月明かりの中、シェラフカバーだけであったが、見渡す限り人工物のない夜の稜線を楽しみながら過ごした夜は忘れられないものとなった。


 ビバーク地点から、登り上げ、樹林帯に入り暫くすると、大倒木帯のジャングルジムであったが、今回の整備作業で難なく通過できるようになった。最もひどい所はルートを北側にとって避けている。


 幾重にも積み重なった風倒木をチェーンソーで不用意に切ればどうなるか?積み重なった木に係った圧力と、その方向。熟練者でも読むには難しい。伐採時に切り忘れた一本の煙草位のツルでも簡単に伐採者の命を奪うのだ。


 ワルサ峰(P1870m)に着く。ここも休憩ポイントだ。ピークにはアスナロの木が天を突き刺すように生えている。

ワルサ峰
ワルサ峰


 小ピークを2つ越え笹が濃くなった所が広く刈り払われている。今回『前進倶楽部』が前線基地とした地点(P1891m)である。整備される前はここから再び笹と根曲がり竹のヤブ漕ぎとなり、水を求め、水無尾根岐を目指したのだった。

猿面峰、岩菅山


 尾根を一旦降り鞍部を通過し、登り上げ平坦となったところが、今回、我々がビバークした地点(1870m)だ。再度10分も登りあげると水無尾根分岐(1910m)に出、懐かしのステンレス製の道標と対面する。ここも休憩ポイントであろうか。


 また、同分岐に赤ペンキで大きく水と書かれているが、不適切な印は返って人を惑わしてしまう。むやみな印付けは控えてもらいたい。


 ちなみに、水場へは、この分岐からナラズ山方向へ稜線上を降り、鞍部(1810m)から赤沢源頭まで下るのである。(水場への印付けはこの鞍部にすべきである)かなり降らなければならないが、まず涸れることはない。我々はヤグルマソウの葉と木の枝で樋を作り水を汲む手法であるが馴れていないと難しい。短いホースを持参する方が賢明である。水を汲む作業も含めて、往復1時間は見た方がよいだろう。


 いよいよ上信越縦走路を歩く事となる。分岐からは暫く急登となる。緩やかになり樹林帯を過ぎると、根曲がり竹の密叢地帯となるが、刈り払いが終了しているので苦にならない。(なにも知らない登山者は刈り方が荒いとか苦情を言うことでしょう)


 笹が薄くなり開けた苔むした平ら(1980m)に出る。ダケカンバの巨木6本がこの一帯を囲むように生えている。この様な落ち着いた雰囲気、好きなので、ちょっと一服。


 今回、どうしても、ここからのルートを確定したかったのだ。ここから後述される<池塘>(2070m)迄の間、ルートがバラバラとなり一度たりとも同じルートを辿ることが出来なかった。


 最小限の装備(軽量)でルート探索する今回は、縦横に動き回れ、最良のルートを発見できる。旧道を出来るだけ忠実に辿るにはヤブの中を行ったり来たりしなければならないのだ。


 旧道はあった!ヤブ山登りの常識を裏切るように、目も向けないような所に入り口があったのだ。少しでも高度を上げようとする心理をあざ笑うように旧道は平坦な方向にあった。


 旧道は空堀で稜線の西側にあり、ほぼ平均勾配でのびていて、ヤブも薄く、今後整備していく上で非常に有益である。


 旧道は、どんどん稜線から遠ざかっていく感じで10分程上がっていく。空堀の最高点(2020m)から稜線を目指す所が急登であるが、急登はわずかでありさほど苦にならない。


 稜線(2060m)に出、谷地の様な所を過ぎると忽然と池塘(2070m)が現れる。池塘は3坪くらいで、約半分に水をたたえている。いざとなれば利用できるが、エキノコックス本土上陸の報もあり煮沸が原則である。

池塘
池塘


 整備される前は前出の<苔むした平ら>(1980m)からこの池塘まで、5倍以上の時間とそれに乗じる労力がかかっていた。やっと地形の全体像を把握したのに!もう何の役にも立たない!虚しい・・・。


 木々を縫うように細尾根を登り上げると、苗場山、ナラズ山、清津川方面の展望が利く見晴らしの良い所(2100m)に出る。水無尾根分岐以来、展望がなかったので、ゆっくりと眺望を楽しむ。

苗場山、赤倉山、ナラズ山、


 一旦、西側のヤブ地帯に入り、濃い根曲がり竹地帯を過ぎ、ピークを巻くようにし、再度稜線鞍部(2100m)に出る。今回、『前進倶楽部』が整備した最終地点だ。刈り払いはここまでである。


 再度、西側のヤブ地帯に入り木が根ごと倒れ、表土がむしり取られた所を通過し再度稜線に出る。


 『前進倶楽部』が整備した最終地点(標高2100m)から佐武流山山頂(標高2191.5m)までの水平距離600m区間は刈り払いが行われていない。ヤブ山歩き経験者の世界と、云いたい所だが、目が届く範囲毎に赤いナイロンテープで印を付けたし、ルートの見通しが利くように枝払いも頻繁に行い、「これで迷うようじゃ、どうしようもない」くらい手を加えた。(00/06/29「目印(赤)テープ」 に関連事項)ヤブ漕ぎは約30分くらいで佐武流山頂に着く。


 山頂自体は地味な印象で、「何でここが200名山に?」と思ってしまうほどである。多分ここまでに至る稜線上から展開される眺望が素晴らしいのであったから選ばれたのだろう。


 また、一瞬であったが、山頂手前で三国峠方面から上ノ倉山~忠次郎山の稜線と、白砂山へ向かう赤樋(赤土居)山~沖ノ西沢ノ頭の稜線が見えた。しっかり脳に焼き付けようとしたが、魅惑な女性そのもので「ここまでょん」っと、霧の中に消えてしまった。

佐武流山


 来年からは、白砂山~佐武流山間が我々の課題だ!重量軽減のためにも新規の水場を確保する必要がある。2.5万図を眺めて2~3個所、水場の候補地が上げられるが、やはり現地で地勢と植生を読み、探すのが正道であろう。


 パートナーA氏の体力の衰えもあり、ゲリラ的山行もそう長くは続かない。彼の豊富な経験と知識が活かされる間、私はパートナーであり、彼に続く。


 尚、赤色のナイロンテープは紫外線のきつい所では、黄色に変色することが後日判明しました。

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